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と、小谷は人差指と中指を二本突き出して見せて、
河原の端にある高い築堤の上で、白い割烹着かつぽうぎを着た女が、口に手をあてて何か叫んでいた。
さつきから、日のあたる縁側近くに縫物を持ち出していた盛子は、あんまりびつくりしたのと身体が重いのとで、立上ることを忘れてかう感嘆詞を連発しながら、あの語尾の跳ね上りを少し響かせながら、庭先に現れた人影に向つて目を瞠みはつていた。
と云つた。
宿の者はこういっただけで、その以上の説明を加えなかった。伊助の報告もそれで終った。
「やつぱり徳さんが多いね」
「もう帰つたんかね」
「おつ!こりあいかん」
思はず口に出かゝつたが、慌ててのみこんだ。彼の頭には今やすべてが明かになつた。土工仲間の刃傷沙汰だつた。その息づまるやうな情景が頭に閃ひらめいた。
「それをよこしたまへ。二足なんていらんよ」
男はまだ立つて、あの話を持ちかける構へといつた風を持していた。
「やあ、来てますね」
鬼倉は一瞬、相手を地着きのごろか何かと思つたらしい、一種の殺気をひらめかした。